中学受験はいたしません!

公立小中から進学を目指す、ワープア夫婦+グータラ娘の奮戦記です

チャレンジタッチ 六年間使ってみて

まんまとベネッセの罠にはまる

さて、中受はしないと決めたものの、本当に学校の勉強だけで十分といえるのか。
とはいえ低学年のうちから、補習塾に通わせるのもなんだよなあ……と不安を抱える親御さんの耳に、そっとささやきかけてくるものがあります。それが、「通信教育」。

Z会、スマイルゼミなどいろいろな会社が受講生を奪い合っていますが、ちい子の通っていた保育園では、なぜか毎月、ベネッセのチャレンジの冊子が配布されていました。これが、小学校入学準備をうたったアニメのDVDつき。そりゃー子どもは見たがります。親に対しても、「入学予定の小学校のおこさんのうち、チャレンジ受講生は何%!」とかいう具体的な数値まで出してきて煽ります。
一体あれはなんなんでしょうか、契約者が出たら園にキックバックが行くとか?? ベネッセはその後(2014年)情報漏洩事件を起こしているので、もしかしたらいまは体制が変わっているかもしれませんが……。

ちい子も、目をきらっきらさせて、「チャレンジ1ねんせい」の受講をねだります。価格も案外お安い(年払いすれば、現在月額2980円。ちい子のときはもう少し安かったような)。
チャレンジは、紙ベースの従来型の通信教育「チャレンジ」と、タブレットで学ぶ「チャレンジタッチ」にわかれており、娘は当然、タブレットの方をやりたがりました。まあ、これで本人がやる気になればいいかな……、というわけで、小学校入学とともに、チャレンジタッチを始めました。

sho.benesse.co.jp

 

ところがこの受講料、学年が上がるごとに上昇し、小6の現在は月々5730円(年払い)。
科目数も増えるので、決して不当だというわけじゃないのですが、若干高いなと思わないわけではありません。
というのは、「チャレンジタッチ」は1日の分量が2レッスンなのですが、ものの5〜10分で終わってしまうんですね。もちろん、子どもの集中力に合わせて内容を厳選してるってことなんでしょうが(^^; えっ、これだけ……?という分量です。

また、それ以上にこれはどうかとおもうのは、例えば、答えが二択の例題があった場合。
一度間違えると、再度同じ問題が出題されるので、前回と反対の答えを選べば、正解になってしまうんですね。これじゃ子どもが「考える」ってことをしなくなってしまうのでは……。
せめて、数字を変えた同種の問題とかが出題されればいいのに、そういった仕組みになっていないため、レッスンで100点を取ったとしてもそれが本当に理解しての100点なのか、かなり怪しいものがあります。

とはいえ、教材自体はゲームの要素を取り入れて楽しく学ぶ工夫はしてありますし、教科書にも対応しているので自然に学校の予習ができます。アラームなどもありますので、上手くすれば、学習習慣も身につくかもしれません(うちの子はあんまり身につきませんでした)。

チャレンジタッチのメリット・デメリット

というわけで、我が家が感じた「チャレンジタッチ」のメリット・デメリットです。
(紙ベースの「チャレンジ」は受講していないため、あくまでも、タッチ限定のお話です)

デメリット
  • 分量が少ない。
  • 基本的に簡単。メインレッスンが終わったあとの実力アップレッスンでは、コースに分かれて発展的な問題も選べるが、全体的に成績下位〜中間層向けの設定か。
  • タブレットの反応がいまひとつで、特に漢字学習の場合、はねやはらい、線の長さを正しく認識してくれず、「あってるのに〜っ」という癇癪につながった(これは、使っているのが6年前のタブレットなため、もしかしたら現在は改良されているかも)。
  • 上に書いた、同じ問題が出題される問題。もう少しオーダーメイド的に、間違ったところを重点的に強化してくれるような仕組みがあればいいのに……。
  • ごほうびで配信されるゲームアプリなどに熱中して、勉強そっちのけでゲームばかりということもあった(時間制限があるし、それほど面白いわけではないのですぐ飽きるようだったが)。
  • 目が悪くなる……(ーー; 
メリット
  • うまくすれば、本人のやる気を引き出し、学習習慣をつけてくれるかもしれな……い?
  • 要点がコンパクトにまとめられ、短時間で自然に学校の予習ができる。
  • 教材をダウンロードしておけば、Wi-fi のない出先でも学習ができる。

こんなところでしょうか。

ただ、実はそんな不満を、親子共々抱えながらずっとそのまま受講してきてしまったのは、デメリットを上回る最大のメリットがあったからなのです。その最大のメリットは、チャレンジタッチに付属している電子図書館まなびライブラリーでした。

まなびライブラリーはよかった

まなびライブラリーは1000冊近いラインナップがあり、毎月作品の入れ替え配信があります。児童文学から子どもに人気の青い鳥文庫、歴史マンガ(これは期間限定だったかも)や固いほうでは岩波ジュニア新書などいろいろあり、読書好きのちい子は、この電子書籍読みたさに勉強するようなものでした。ほぼ毎日読んでいて、特にコロナのために公共の図書館が閉まってしまったこの春などはとても助かりました。

 

library.benesse.ne.jp

 

もちろんデメリットもあり、最大のデメリットはどんどん目が悪くなって5年生からメガネになってしまったことです(泣)。
また、学年を超えて読めるので、中学生向けくらいのライトノベルにはまってしまい、実際に買う本もやたら執事だのお嬢様だの探偵だの魔女だのが出てくるものばかりになってしまったことでしょうか。

とはいえ、これだけの分量を実際購入していたら、タッチの受講料をはるかに超えていたと思うので(図書館も、人気作は順番待ちでなかなか回ってこない)、我が家にとってはこの「学びライブラリー」だけでも受講している価値はありました

しかしながらちい子には、最初から「進研ゼミは小学校までね」と言い聞かせており、一応卒業と一緒にダブレットも卒業の予定です。とはいえ、これからまたタッチもあの手この手でじわじわと、中学講座に誘い込むんだろうなあ……(^^;;

 

 

 

 

 

育てたように子は育つ……んなわけないっ!!

さてさて、前回までに東京から千葉へと越した顛末を語ってきましたが、ここで一人娘のちい子について語っておかなければなりますまい。

だって、いくら「中学受験はしないで、公立中高から大学を目指すぞ!」と親が吠えてみたところで、勉強するのも受験をするのも娘本人に他ならないわけですから。親がじたばたしたところで、ある時期からもう本当に、親のいうことなんて聞かなくなってきます。

ごくごく平均的に発達してきた我が子だが……

ちい子は現在12歳の小6です。もう12年も前のことなので、記憶が曖昧になっているところもありますが、高齢初産のわりに経過は順調、予定日を少し過ぎて健康に誕生しました。

最初に言葉を発したのは1歳1ヶ月、最初に歩いたのは1歳2ヶ月くらい、とごくごく標準的に発達しました。母子健康手帳の記述と比べていっても、特に遅いということも、早いということもなかったような記憶があります。

「うちの子、天才かも〜!」そんなふうに思う瞬間もなかったわけではありませんが、多分90%くらいの人がそう思うんじゃないかと思います。

文字に興味を持ち始めたのは年中くらい。保育園のお友達では、年少前にもうすらすらひらがなを読むお友達なんかもいたので、ちい子がとりわけ賢いとか、他の子に比べて優れている点があるとか、そういう印象は全くありませんでした。

ちい子は2〜3歳頃から絵本がとりわけ好きになり、家で起きている時間はしょっちゅう読み聞かせをねだりました。寝る前は毎晩、枕元に絵本を積み上げ、10冊くらいは聞かせないと満足しない。こっちが寝落ちしそうになると、絵本の角で頭を殴るというオソロシイ暴力幼児(泣)。それならそれで早いとこ文字を覚えて自分で読んでほしいところだったのですが、読んでもらうのほうが楽なのか、結局小3くらいまでは読み聞かせをしていた記憶があります。

ただ、ちい子は2歳頃から保育園の先生に、「ほかの子に比べて感情の起伏が激しい」と言われてきました。特に、自分が期待していたように物事が進まないと泣いて喚いて、発狂寸前。スーパーの床に寝転んで「嫌だ〜!!」とじたばたしているちい子に、「こんなマンガみたいなこと、ほんとにするんだ……」と呆然となってしまったこともありました。
当然ながら周囲にはわがままと見られ、「親の躾がなっていないから……」と白い目で見られるこっちはたまったものではありませんでした。

小学校に入学したが……

就学時健診はとくに問題もなくパスをしてしまったちい子でしたが、小学校に入っても激しい性格は変わりませんでした。テストで100点取れなかったと言っては教室でテストを破り捨てて大泣きしたり、図工で作品づくりに失敗して教室を飛び出したり。担任の先生からはしょっ中電話がかかってきて、日中電話が鳴ると、「学校からかっ!?」とドキドキしてしまう日々が続きました。

ここまでくるとさすがに発達障害を疑い、半年ほど待ってようやく病院で検査(WISK-IV)を受けましたが、できることできないことに凸凹はあるものの、性格の範囲内という結果でした。今にして思えば、引越しをしたこともあり、新しい環境で本人も言葉にできないストレスを抱えていたのかもしれません。

3年生、4年生と進級するにつれ、さすがにテストで100点取れないと言ってブチギレたりすることは減ってきましたが、負けず嫌いは今も相変わらずです。
負けず嫌いだけなら、それをいい方向に持っていけば、いろいろ能力を伸ばすこともできそうですが、最初に「これは勝負にならない」と思うと、もうハナから投げ出してしまうので始末が悪い。そして勝負にならない分野が、スポーツも音楽も図工も……と多方面にわたるのでさらに始末が悪い。
さらに、負けず嫌いなくせにコツコツ物事に取り組むのが苦手なので、結局結果も残せず悪循環となるのでなお悪い(汗)。

親は子どもを選べない

とにかくちい子の激しい言動には散々悩んできたので、入学前も、園の先生や友人や親、保健所の育児相談や民間の育児相談など、いろいろなところに相談をしてきました。
もっとも相談したところで、的確なアドバイスはなかなか受けられませんでした。特に保健師さん、結構こちらが傷つくようなことを平気で言ってきますね。まあ経験もあるからなのでしょうが、「こうこうこうすると、子供はこうこうこうなる」みたいな決めつけが多いこと。

曰く、「母親が仕事をしているので子供が寂しく思って問題行動に走る」とか、「テレビばっかり見せているから子供がキレやすくなる」とか。昭和時代かいな。

ちい子の激しい性格も、例えば親の私が勝ち負けにこだわり、「一番にならなければ意味がない!」「一番になれるようがんばれ!」みたいなことをいつもちい子に吹き込んでいる、とか一番を取ったときだけ喜んで褒める、とかなら話は簡単なんでしょうが、実際は全くそんなことはないので、育て方というよりも、本人の元々の性格というか、気質が大きく関わっているのは間違い無いのではないでしょうか。

ちい子がもっと大きくなったら、また感想は変わる可能性はありますが、12年間育ててみて、つくづく人は一人一人ぜんぜん違うのだから、「こう育てたから、こう育った」なんて簡単な公式に当てはめることなんか出来っこない、と思います。

もちろん家庭環境からは大きい影響を受けるのでしょうが、気質というか、本人の脳のクセのようなものが本人を形作る一番大きなものになっているのではないかな……、そう思うお母さんはいっぱいいるんじゃないでしょうか。まさに「子どもはガチャ」。

 

 

新しい街で小学校生活が始まる

住まいは慎重に賃貸から

……というわけで、やっと5年半前、娘の小学校入学を目前に、なんとか千葉県の某市某新興住宅地に落ち着いたところまで語り終わりました(ゼェゼェ)。

小学校入学に合わせたのは、やはり途中で転校をさせるのがかわいそうだったということがあります。そもそも転入出の多い小学校なので、小学校低学年でなら、なんとかなるかもしれませんが……。

引っ越したといっても、購入したわけではありません。賃貸です。いくら気に入った物件があったと言っても、土地柄をあまりわかっていない状態で、いきなり購入するのはキケンです。学区が合わなければ、それこそさっさと引越しできるように、中学くらいになるまでは賃貸で様子を見てもいいのではないでしょうか。万一いじめに遭ったり、入りたい中学や高校が遠かったりした場合にも、ためらいなく引越しすることができます。

とはいえ、これらはライフプランに関わることです。うちも、年齢的にそろそろ持ち家・持ちマンションを持たないと、老後に路頭に迷うかも……という年代で、結局2年間賃貸で様子を見たあと、ここでなら大丈夫かも、ということで学区内に現金一括で中古戸建てを購入しました。このあたりは新築分譲もまだ行われていますが、バブル期やその後に建てられた状態のいい中古住宅、中古マンションが1000万円台で頻繁に売りにだされており、リフォームをすれば環境がよい庭付きの戸建てにじゅうぶん住める、家賃を考えればむしろおトク、というのがポイントになりました。

身軽な賃貸で様子を見つつ、物件は近くでゆっくり探す……というのがやっぱりオススメです。

PTAに入ろうとするも……

新しい街で、めでたく小学校生活をスタートさせたちい子。わたしも周囲に知り合いが全くいない状態だったため、同世代の知り合いを増やすために(そしてあわよくば地域情報や進学情報をゲットするために)、小学校PTAのクラス役員に立候補することにしました。ちい子の通う小学校は、子供1人につき1回、なんらかの役を引き受けなくてはならないという決まりがあるのです。

ところが、同じようなことを考える人が多いためか、はたまた低学年のうちに引き受けた方が重い役割を負わなくてよさそうという期待からのためか、低学年は役員希望者が多く、なんとくじ引きで決めることに。「やりたくなくてくじ引きやじゃんけんというのは良く聞くけど、希望者が多くてくじ引き〜?!」とびっくり。

残念ながらわたしはこれでハズレてしまい、2年生でもはずれ、結局役員になったのは3年生になってからでした。ただ、低学年時に引き受けたがるのは、わたしのような第1子のお母さんが大半で、一度第1子のときに役員経験のある第2子、第3子のお母さんは、高学年で役員になる傾向が強いようでした。そういったお母さんは上の子が高校受験や大学受験を経験していたり、まさに体験中だったりするので、ママ友になってリアルな進学情報を得るには、むしろ高学年になってから役員をやるというのもいいかもしれません。これは学校によってもだいぶ様子が異なるのかもしれませんが……。

 

 

 

縁もゆかりもない千葉県に、住むところを探す

理想の場所の探し方

さて、引越し先として千葉県が浮上したものの、土地勘がなくどこに越したものか、最初は全く見当がつきませんでした。
とりあえず、夫の通勤圏で、SUUMO、HOME’S、AtHome といった賃貸住宅情報サイトを検索しまくりました。まずは払える範囲の家賃で、家族三人暮らせそうな物件をピックアップし、続いてその地域について、土地柄などの評判をネット検索しました。

ネットの情報が正しいとは限りませんが、それでもだいたいの傾向というのは見えてきます。
その中で、バブル期に新興住宅地として大規模に開発された地域が、住民が高齢化し、地価も家賃もだいぶ下がってきているものの、それでも住環境が保たれ、若い世代も流入してきている地域というのがいくつか見つかりました。

それらの街に週末を利用して、遊びがてらせっせと足を運びました。具体的な候補物件があるときは、地元の不動産会社に連絡を取り、物件を見せてもらったあと、学区の小中学校や、近隣の商店街やスーパー、図書館などの公共施設、公園などを覗き、住環境をチェックしました。

住宅地といっても自然環境に恵まれ、空気もよく、歩道などもゆったりと安全に設計されているなど、住んでいる都内と比べると「ほぉ〜」と思わされる街もありましたが、一方で、住民の高齢化で小中学校が統合されていたり、スーパーが撤退して貧弱な商店しかなかったりといった街もありました。こういった空気感は実際に現地に足を運んでみないとなかなかわかりませんでした。

良い学区はどうやって探す?

中受回避で引っ越すのが目的のひとつならば、当然公立小中学校の「学区」ということも意識しなければなりません。

不動産屋さんのチラシやホームページには、よく「〇〇小学校区!」といった宣伝文句が載っていることがあります。これらはまず、その地域で売りになる、評判のいい学校です。

ただし「良い学区」と言っても、人によって意味合いは違うと思います。中受を計画している人にとっては、中受率が高くて、周りの子の塾通いが当たり前な学区がいい学区ということになるでしょう(千葉ならたとえば千葉市海浜幕張地区など、まわりに高レベルの一貫校がある場所は中受率が高い)。

じゃあ、私たちにとって「よい学区」って何?

中受率が高くて、勉強のできる上位層がごっそり抜けてしまうような地域は絶対にNGです。
多くの子供がそのまま公立に進学するが、それなりに学校のレベルが高い……そんな都合のいい学区なんてあるの??

そういう地域はないわけではありません。

・近くにめぼしい中高一貫校がない

・工業団地(研究施設)や大規模病院などが近く、転勤族が多くて転入転出が多い

……といった場所が狙い目であるということが、だんだんとわかってきました。

このへんの事情は、不動産屋さんが詳しいです。特に大手不動産チェーンよりも、地元に根付いた昔ながらの不動産屋さんの方が、小中学校の細かい評判などもつかんでおり、いろいろ教えてもらえました。

また、地元の学習塾のホームページやブログなども参考になりました。中受コースがなく、小学生のための高校受験コースが主流であれば、中受がそれほど盛んでないということがわかりますし、その塾自体の口コミや合格実績などを調べることで、どういった進学先に子供たちを送り出しているのか、といったこともわかりました。

こで夫の希望は「近くに図書館があること」で、これはちい子が本を借りたり、将来自主勉につかったり……といろいろ使えるに地がありません。

こうしてある程度候補を絞り込んでいき、地元の不動産屋さんに条件や希望を伝え、物件を見学し、ようやく引越し先が決定したのは、ちい子が小学校に入学する前ぎりぎりの2月のことでした。

 

【脱線編】地方移住は、子どもの教育環境を考えて!

引越し先の条件(3)、古くからの地元民で固まっている本物の田舎は避けたい、これは自分の経験に基づいています。

ときどき、「自然いっぱいのところでのびのびと子育てしたい」という理由で、本当の地方移住を考える方がいます。
自分たちが田舎のコミュニティに馴染むことができるのであれば、お子さんが小さいうちはいいかもしれません。

 家に帰ると玄関前には採れたてのトマトが。きっとお隣の**さんが届けてくれたんだ……。
 仕事のときに、ご近所の**さんが子どもを預かってくれた、ありがたい……。
 なんて素敵な田舎暮らし!!

しかし、人々がおせっかいなくらいに親切で温かく、コミュニティがしっかりしているというのは、裏を返せば、詮索好きの集まりで個人情報はパッと広まり、同調圧力がすごくて出る杭は打たれる、人の足を引っ張る社会でもあるということかもしれないのです。

こでまりが卒業した30年前の田舎の公立中学(1学年50人ほど)は、まさにそんなところでした。

例えば、学校の英語の授業で、少しばかり発音が良いと、からかわれたり、冷やかされたりする。それが嫌でわざと棒読みする。
本を読んでいれば「本ばかり読むな」と非難される(先生にまで!)。
常に勉強よりも運動の方に価値が置かれ、優等生はむしろ「ガリ勉」と馬鹿にされる。

そんな環境で勉強をしろというほうが酷な話です。

とにかくものすごい閉塞感がありましたが、そもそも閉塞感があったということ、自分の環境が劣悪だったということに気づかされたのは、中学を卒業し、学区トップの高校に進学してからでした。1時間以上かけて高校へ通うようになって、話の合う友達もでき、やっと息がつけるような思いがしたものです。

中学校なんてたった三年間のことなんだから、息をつめてやりすごしてしまえばいい、大人だったらそう思えるかもしれませんが、子どもは逃げ場がありません。公立を回避しようにも、通える範囲に私立や国立がない。

地方移住は大人にとっての夢かもしれませんが、子どもの将来の選択肢を狭めてしまったり、才能を潰してしまうかもしれない。そういう可能性も考えて、移住先の土地柄、教育環境というのはよくよく事前調査したほうがいいと思います。

 

反対に、地方はなぜ若者が流出してしまうのか、その理由というのも考えてみる必要があると思います。働き口がないこと以上に、子どもの教育環境が残念なことになっていないかどうか。

コロナ禍で、地方移住の動きが盛んになるのでは、という予測があります。

地方の町や村が、リモートワークができる子育て層を都会から呼び込みたいのなら、思い切って公立の小中学校に投資し、都会では考えられないような安価で充実した教育環境を用意するというのは、ひとつの手としてあるかもしれません。

 

 

そうだ、東京を出よう!

巻き込まれたら最後さ

このまま都内に住んでいたら、受験するにせよ、しないにせよ、中受の波に否応なく巻き込まれてしまう! 

そう思った私は、漠然と東京脱出を考え始めました。
当時住んでいた賃貸マンションの家賃が家計の負担になってきていたこと、またちょうど、こで夫のがんが寛解状態になり、経過観察となったこともその気持ちを後押ししました。

でも、中受の嵐に巻き込まれないって言っても、どこに引っ越せばいいのだろう……?

「東京脱出」とは言うものの、こで夫の通勤先、また私自身の仕事相手がほぼ東京なので、それほど遠くに越せるわけではありません。


東京へのぎりぎり通勤圏(ちい子が都内の大学に進学したとしてもぎりぎり通えるかな?)で……

1)公立高校がまだしっかりとプレゼンスを保っているような所。

2)それゆえ、中受率が高くない場所。

3)こでまりが育った田舎のような、古くからの地元民で固まっているようなところは避けたい。転勤族なども多くいる、風通しのよい所がいい。

4)公立学校が荒れていない場所。

5)高校、大学進学に備えた塾なども多少はある場所。

果たして、そんな絶妙なバランスを保っているところなんて、東京郊外にあるのだろうか?

……そんな場所のリサーチを、主にネットで始めました。

翔んで〇〇?

東京への通勤圏というと、神奈川、千葉、埼玉がまず浮かびます。
場合によっては、茨城県の南部(TX沿線など)なども入ってくるかもしれません。
(通勤に新幹線が使えれば、静岡県の東部や群馬県の南部なども選択肢のうちに入ってくるかもしれませんが、定期代は出してもらえなさそうでした。)
病み上がりの夫に、あまり長距離通勤させるのも気が咎めましたが、本人は始発で座れる場所であれば多少遠くても構わない、といいます。

千葉、埼玉はほとんど馴染みがなく土地勘もありませんでしたが、神奈川は、親戚が住んでいたことから多少は地名の見当もつき、当初は神奈川がいいかな、などと考えていました。
ところが神奈川在住の友人から、神奈川も中受熱が東京についで高くなっていて県立高校が凋落していること、また、県立高校が内申重視(*実際は内申書の扱いは学校による。上位進学校は当日の試験重視が多い)で、9教科満遍なく取れる子が有利、という話を聞かされました。

一方、千葉はそもそも私立中学自体数が少なく、都内に近い地域はそれなりに受験熱が高まっているものの、少し離れればまだまだ公立への進学が主流であるということがわかりました。高校も県立伝統校がまだまだがんばっているようです。

通勤経路も千葉の方が便利だったこともあり、縁もゆかりもなかった千葉県に、引越し先を絞ることに決めました。

 

 

私が東京脱出を決意するまで(2)東京の中受率?

クラスの女子全員受験!?

はじめて、「これはエラいことになった」と思い始めたのは、ちい子がまだ保育園の年中組だったころです。

同じクラスのママ友に、年の離れたお兄ちゃんを持つお母さんがいました。このお兄ちゃん、区立中の一年生になったばかりだったのですが、小学校の同じクラスの女子(12〜3人?)が、なんと「全員」、中学受験をしたというのです。

ちょっーーと待てよ、都内のS区とはいえ、全員が全員そこまで勉強のできる or 勉強熱心な or 親が金持ちな子ばかり揃っているなんてことある? 
どう考えてもお勉強嫌いな子や家計に余裕がない子だっているだろうに、そこまでしなければならないもの……?とかなりたじろぎました。
しかも、学区の中学は特に荒れているという話も聞きません(もちろん私が知らないだけで、女子ママのネットワークでいろいろ飛び交っているのかもしれませんが……)。

もちろん、受験したからといって全員が私立や公立の一貫校に進学したわけではないでしょう。友達が受けるから自分も、という「な〜んちゃって受験」や、玉砕覚悟の記念受験という子もいるでしょう。
かといって受験勉強何もなしで当日いきなり受験、なんてわけにもいかないでしょうから、全員なんらかの塾や通信教育などで受験勉強をしていたに違いありません。

聞くところによると、都内の私学は中高一貫が増え、特に女子は、高校の募集人数が年々減っているので、高校から私学に入ろうとすると、特に高偏差値帯になると選択肢が非常に少ないというのです。つまり都立を滑ると、かなりランクを落とした私立に進学しないといけなくなる……とのこと。(まあ、どれくらい勉強ができるかどうかもわからない保育園の子に、そんな10年後の心配をする必要もないのかもしれませんが。)

同じ頃だったでしょうか。大卒で初めて勤めた会社のOB会に、退社後久しぶりに参加したことがありました。
お互いの子供の話になったとき、ちょっと上の先輩たちが、こぞってお子さんを私立中に進学させているのを知りました。お子さんが小学校高学年というと、当たり前のように「来年(再来年)受験だね〜」と返している会話に驚愕しました。

都内は国私立中への進学がスタンダードなのか??

本当に、東京の子はみな中学受験するのでしょうか。
データとしては、決してそんなことはなく、
例えば、こちらの記事。↓
https://urbanlife.tokyo/post/26457/
2019年度の資料ですが、2018年度の公立小卒業児童のうち、都内の公立中に進学したのは79.9%だそうです。私立や国立中に進学しているのは、20%に過ぎません。

とはいえ、これは地域によってかなりの偏りがあり、港区や文京区など40%を超える地域もあれば、江戸川区のように10%程度の地域もあります。
当時我が家が住んでいた区は30%程度といったところでしょうか。

進学率であって受験率ではない(落ちて公立に行く子はどれくらいいるのだろう……)ことには注意が必要ですし、男女の内訳もわかりませんが、女子の方がずっと受験率が高いのだとすれば、40%とか……それくらい? 
(もっとも当時はリーマンショックの少し後だったので、この統計よりは少し低かったかもしれません。)

当時、我が家は夫がガンで闘病中。精神的にも経済的にも先が見えない状況でした。

もしも、もしもちい子が、私も受験したいと言い出したら? 

「うちはお金がないから、受験はできないのよ」と突っぱねることができるのか? 

もしかして、学年の学力優秀な子たちは受験で抜けてしまい、公立中学はレベルが下がってしまうのではないか?

優秀層の子たちが抜けたあとの中学では、たとえいい成績が取れたとしても井の中の蛙で、結局は大学受験で苦労することになるのでは?

数少ない公立中高一貫校や、国立中学限定で受験する、という手はあるのかもしれませんが、そもそも6年生の一年間だけでも100万かかる(!)という中学受験塾にやる余裕もありません。

中学受験ができないことで、本人がいらぬコンプレックスを抱いたり、学力を伸ばす機会が奪われたりするのではないか?

……そんなことが頭をぐるぐると駆け巡りました。

 

(つづく)